大会前の予想では学のいるＹ工業は評価が低く予選で負けると地元の新聞社も関係者からも言われていた。ところが蓋を開けると二回戦で優勝候補の一つのＦ高校を試合終了前に得点を入れて、そのまま逃げ切り勝つことが出来た。得点もオウンゴールで相手の自殺点。運も味方にした試合内容だった。
 
その試合でも学は相手にマークされ動きを封じられたが、最後まで得点を許さず引き分けに貢献できたのだ。そして三回戦も逆転勝ちし、次の順々決勝の相手は、昨年の県代表だったＫ高校と対戦する事になった。シード校で一回戦はなく、二回戦から勝ち上がり、三回戦も余裕を持って勝つことが出来た強豪校だった。
 
翌週の月曜日の朝、二人で駅に向かって歩いていると、
学君、私の高校のサッカー部、残念だけど三回戦で負けてしまったの
そうらしいな、俺もＨ高校が準決勝まで勝ち上がると思っていたんだ
うちの高校も前評判は高かったらいの。でも格下相手に負けるとは、何処か油断があったと思うの
でも何処の高校も夜遅くまで練習していたのに。家なんか前評判が悪かったのに。勝つには勝ったけど運も味方にしないと駄目なんだ。これまでの経験で分かった事なんだ
そうだよね。文化系のクラブと違って、運動部は練習以外にも運も味方にしないと勝てないんだね
でも運も繰り返し練習しないと簡単には来ないんだ。だから毎日、練習しているんだ
ところで学君、今度の試合には姉の沙羅と将君も行くと言っていたのよ。聞いている
聞いていないよ。昨夜も話したのに何も言ってなかった
梨奈こそどうして知ったんだ
昨日、沙羅姉ちゃんから電話が有って試合会場と試合時間を聞かれたの。そしたら休みだからと言ったので将君と一緒に行くからね、と言っていたの
俺、初耳だけど、沙羅ちゃんと将兄は付き合っているのか
私、姉達と離れて暮らしているから分からないけど、その様な雰囲気だった。夜にでも聞いて見ようか
そこまでしなくてもいいけど
でも気にならない
それは気になるけど
私もよ。学君、急がないと電車に乗り遅れるわよ
梨奈は自分の腕時計を見ると驚いた表情をした。
この話の続き、また明日しよう。俺、疲れているから電車の中で居眠りするかも知れないから、その時は起こしてくれないか
それなら私が降りる時に起こすからね
と言って二人は急いで駅に向かった。